小狐丸の特徴③ 浦又有狐

和州布留大明神御縁記には、小狐丸の特徴として、『浦又有狐』とあります。『浦』は、刀体の裏面という意味でしょう。『又』は表面に藤の花房の模様や梵字のマンの字が彫られているのと同様にという意味でしょう。

問題は、『有狐』の記述です。狐は字とも図とも解釈できるのです。

表に書かれている『マン』は字と書かれているから文字で、藤英=藤の房は文字より図と解釈する方が自然と考えられます。

能の演目『小鍛治』の題材となっている小狐丸は、茎(なかご)の表に『小鍛治宗近』、裏に『小狐』と彫られたということです。このことと関連付けると、長池ゆかりの『小狐丸』の裏には『狐』と彫られていたと解釈するのが自然なのかもしれません。

しかし、『小鍛治』ゆかりの小狐丸とは表の記述が異なっていることから、別の太刀であると考えられます。

そこで、1つ注目したいのが、大和の伝説(高田十郎編)の『宝剣小狐丸』にある「この劍(小狐丸)を抜くと、小狐の走る姿が現れるということである」という記述です。

これからは全くの推測ですが、石上神宮に奉納された太刀は、三条宗近作の国宝『三日月宗近』同様、刀身に打ちのけが見られ、いくつかの打ちのけが組み合わさってある角度から刀を見たときそれが狐に見えたというのが、『浦又有狐』が意味するものではないでしょうか。

2020年11月09日